ダグラス・T・ホール(Hall,D.T. 1940‐ 以下ホール)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得した後、ボストン大学で組織行動論を教えておられます。日本マンパワーの発行するキャリアコンサルタント養成講座のテキストに出てくる理論では、最も新しいものになります。
それ故に、個人の内面的キャリアを考える上だけでなく、組織の側から見た個人のキャリア形成を考えるう上でも、非常に参考になると認識しています。
ホールの考えるキャリアの定義は以下の4つに集約されます。(日本マンパワー キャリアコンサルタント養成講座テキストより)
(1)組織階層的に上方へ移行するのがキャリアであるという視点はとらない。
(2)キャリアに成功や失敗があるとしても、それはそのキャリアを歩む本人によって評価される。
(3)キャリアには主観的側面(個人の成長に伴って変化する価値観、態度、動機)と客観的側面(特定の仕事のオファーを受け入れたり拒否したりというような観察可能な選択行動)があり、両方を考慮する必要がある。
(4)キャリアとはプロセス(仕事に関連した経験の連続)である。
日本社会にも当てはまると思いますが、産業社会が高度化するに従い、「最初に就職した会社は組織で定年まで働き続ける」ことが少数派になった昨今、上記の4点は、正に的を射た見解であると言えるでしょう。1点ずつ詳しく触れていきます。