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セルフキャリアドック導入推進、キャリアコンサルティング、及び有料職業紹介事業を通じて、「人」にかかわる様々な課題解決にワンストップで取り組んで参ります。

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 ダグラス・T・ホール(Hall,D.T. 1940‐ 以下ホール)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得した後、ボストン大学で組織行動論を教えておられます。日本マンパワーの発行するキャリアコンサルタント養成講座のテキストに出てくる理論では、最も新しいものになります。

 それ故に、個人の内面的キャリアを考える上だけでなく、組織の側から見た個人のキャリア形成を考えるう上でも、非常に参考になると認識しています。

 ホールの考えるキャリアの定義は以下の4つに集約されます。(日本マンパワー キャリアコンサルタント養成講座テキストより)

(1)組織階層的に上方へ移行するのがキャリアであるという視点はとらない。
(2)キャリアに成功や失敗があるとしても、それはそのキャリアを歩む本人によって評価される。
(3)キャリアには主観的側面(個人の成長に伴って変化する価値観、態度、動機)と客観的側面(特定の仕事のオファーを受け入れたり拒否したりというような観察可能な選択行動)があり、両方を考慮する必要がある。
(4)キャリアとはプロセス(仕事に関連した経験の連続)である。

日本社会にも当てはまると思いますが、産業社会が高度化するに従い、「最初に就職した会社は組織で定年まで働き続ける」ことが少数派になった昨今、上記の4点は、正に的を射た見解であると言えるでしょう。1点ずつ詳しく触れていきます。

 その昔、当方がキャリアカウンセラーの養成講座を受講していた時代に触れた理論で、最も腑に落ちたのが、エドガー・H・シャイン(Edgar Henry Schein 1928- 2023以下、シャイン)の「キャリア・アンカー」(個人のキャリアの軸になるもの、考え方、価値観)でした。特に、20代、30代を相手にお話を伺っていた時期には、

・自分は何が得意か?
・自分は本当のところ何をやりたいのか?
・何をやっている自分に意味や価値を感じられるのか?
(日本マンパワー キャリアコンサルタント養成講座テキストより)

という「3つの問い」は非常に有効でした。が、相談者の年齢が上がるに従い、この視点だけでは不十分であることも痛感してきた次第です。

 シャインも「キャリア開発の視点の本質は、時の経過に伴う個人と組織の相互作用に焦点があることにある」(邦訳『キャリア・ダイナミクス』p.2)としているように、組織の側からキャリアを考える視点があってこそ成立するとしています。おそらくシャインの理論の本質はここにあると思います。

 結局、組織の一員として働く人がほとんどである社会においては、いくら心理学的視点で働く本人の内面のみにフォーカスしても片手落ちに終わるということではないかと思います。

 「ナラティブ」(narrative)とは日本語訳で「物語」とされています。キャリアコンサルティングにおける「ナラティブ・アプローチ」とは、相談者に過去の出来事やストーリー(=その人の物語)を語り続けて頂くことで、一見、ばらばらに見える仕事経験を統一あるストーリーに組み立てていく(理想的には、その結果として相談者が新しい見方を得て、さらに前向きな行動変容が起こる)関わりです。
 
 よって、(お察し頂けるかと思いますが)1回の面談やカウンセリングでは完結するはずも無く、少なからず時間のかかるプロセスになります。(それを踏まえると、一回の面談と、履歴書や職歴書の記載事項だけで、本人の選択肢を提示(あるいは決定)するようなアプローチは、いささか乱雑ではないかと思います。)

 また、当方の経験上、働く上で何らかの悩みに遭遇した、あるいは何らかのキャリアの「壁」に当たった方の話を伺う場合、(無論、事実そのものを変えることはできませんが)、その解釈を変える上では、このアプローチはかなり有効です。なので、現在のキャリアコンサルティングでこの手法を念頭に置きながら、話を伺うキャリアコンサルタントが多いのではと思います。

 キャリアコンサルタントの養成講座や、更新講習でも必ず出てくるマーク・L・サビカス(Savickas.M.L 1947- 以下、サビカス)は、おそらく現在の日本のキャリアカウンセリングに最も影響を与えている学者であると言えます。
特に「構成主義」や「ナラティブ・アプローチ」といわれる考え方は、極めて現代社会に適合しているものであると言えます。
(詳細は割愛します。ご興味のある方は検索してみてください。)

 「構成主義」とは日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座のテキストでは「個人がどのように物事を認識するかに焦点を当てる」ことと説明しており、サビカスは「人は職業行動と職業経験に『意味』を付与することにより、自らのキャリアを構成する。」と主張しています。
当方が所属するJCDAの掲げる経験代謝の考え方も、このサビカスの主張に沿ったものです。
 
 これは、「キャリアの解釈は極めて主観的であるべき」とする当方の理解にも合致します。つまり、キャリアの本質は履歴書や職歴書に記載されている客観的事実(=いわゆる「外的キャリア」。巷のコンサルはこちらのみで人を判断するのが得意な模様ですが。)よりも、その客観的事実をどのようにとらえるか?で肯定的にも否定的にも解釈できるというものです。

 但し、現実の転職・再就職や学生の就職の場面では、特に入口の部分ではこの「客観的事実」によって、選考の土台に乗るかの「ふるい」にかけられているのもまた事実です。よって、その「解釈」を、募集元の企業側に「正しく」伝える仲介者が必要になってくるかもしれません。

【課題6:個人の転機と組織の変革に対処する。】

 文章にすると簡単な命題ですが、これを社会人人生の生涯にわたって実践し続けるのは、かなり難易度の高いことです。
 そもそも、優秀な方々が集まる大企業(社名は伏せますが)ですら20年~30年のスパンで考えると、変化に対応できず衰退してしまうような物騒な時代です。これを一人の個人で実践するのは本当に至難の業です。
 
 ですが、考えてみると、どんなに優秀なキャリアを積んだ方でも、すべてがうまくいく順風満帆な社会人人生はあり得ません。先述のようにキャリアは転機の連続です。これは防ぎようがないので、大事なのは「転機にどのように対処するか」です。
 加えて会社員や組織に属する皆様の場合は、本人の好む好まざるにかかわらず、組織の論理や政治に左右されるケースが結構あります。

  当方の日常業務でも「私は会社を辞めるつもりは無かったのに・・・」「最後まで勤めるつもりだったのに・・・・」といったコメントを伺うことは日常茶飯事です。

  ではどのように対処するかですが、無論、巷の自己啓発本やマニュアル本に頼っても結構ですが、当方は日経新聞の「私の履歴書」をおすすめしています。ご存知の通り毎日掲載されていますが、何気なく目を通すのと、各種のキャリア理論を念頭に置いて読むのとでは、腹落ち感が全く異なると思います。

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