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セルフキャリアドック導入推進、キャリアコンサルティング、及び有料職業紹介事業を通じて、「人」にかかわる様々な課題解決にワンストップで取り組んで参ります。

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 繰り返しますが、「キャリアはこれらの転機の連続である」ということに反論の余地はないかと思います。著名人の自伝や日経新聞の「私の履歴書」を拝読しても、その中身は転機(それも、ネガティブや困難さがつきまとうもののほうが多いでしょう。)だらけです。

 が、その転機から立ち直る、復活する、復興する場合と、そうでない場合を詳しく見ると、その違いは「当事者本人のリソース(内的資源)の差」によるとシュロスバーグは示しています。

 さらにその内的資源においても、①人 ②物的資源(多くの場合は金銭、資金) ③公的機関や民間団体 の3つの支援があれば転機の難度は下がるとされています。

 キャリアにおいて決定的に重要なのは①の「人」(=支援者)であるのは言うまでもありません。②の物的資源や③の公的機関や民間団体の支援には限界があります。一方で①の「人」については、当事者の心構えと働き方次第では、如何様にでも且つ無限に広がっていきます。

 もし、キャリアの作り方に黄金律があるとするならば、巷にあふれている自己啓発本の実践や、人材紹介会社の俄かコンサルタントが唱えるバックキャストに基づくキャリア・ディベロップメント(と言えるかどうか微妙ですが)ではなく、シンプルに支援者を増やすような働き方を心掛けたほうが好ましいと思います。

ナンシー・K・シュロスバーグ(Shlossberg.N.K. 1929~ 以下、シュロスバーグ)はキャリアというものを、「転機」(Transition)の連続であると考え、様々な見方を提示しています。

この転機の定義には2つあり、1つ目はシュロスバーグが「イベント」(event)と分類しているもので、予期していた転機(例、入学、卒業、就職、結婚、出産など)と、予期していなかった転機(例、失業、転勤、事故、離婚など)の2パターンあります。

もう一つが「ノンイベント」(non-event)と定義しているもので、期待していたことが起きなかったという転機(例、再就職できない、結婚できない、期待通りに昇進できない 等)のことを指します。

いずれにせよ、「キャリアはこれらの転機の連続である」というシュロスバーグの考え方に異論を挟む方はおられないかと思います。さらに、キャリアカウンセリングの現場において焦点になるのは「予期していなかった転機」と「期待していたことが起きなかったという転機」の場合です。

この2つの転機に遭遇した時に、どのように対処するかによって、いわゆるキャリア・ディベロップメントが形成されると言っても過言ではありません。(安っぽい会社はキャリア・ディベロップメント=年収増加の文脈で乱用していますが。)

1999年にクランボルツが何人かの研究者と共同で発表した、キャリアにおける「偶然」の影響について説明したプランド・ハプンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory)は、おそらく同氏の研究成果で最も有名なものです。

直訳すると「計画された偶然理論」になりますが、当方は「キャリアの大部分は『偶然』によって形作られ、かつそれを『好意的』に受け止めるほうが、『結果的』に良いキャリアになる」という理解です。

ものの研究では、キャリアの8割は「偶然」の要素によって左右されるそうです。(「偶然」を「予期せぬ出来事」に置き換えていただいたほうがわかりやすいかもしれません。)

確かに、一般的にキャリアで成功したとされる著名経営者の自叙伝や日本経済新聞の「私の履歴書」を紐解くと、これらの方々のキャリアが「予期していた」通り、あるいは「計画された」通りに作られたということは皆無です。予期せぬ出来事(ほとんどがトラブルや問題ごとといったネガティブ要素満載の場面です。)に対応し、考え、周囲の協力を得ながら向き合った結果、今の立場やキャリアがあるのは疑いのない所です。

詳細は割愛しますが、この「偶然」を(良い)キャリア形成の転機とするために①好奇心②持続性③柔軟性④楽観性⑤冒険心の5つのスキルが必要と同氏は述べておられます。

この5つのスキルというものも実に上手く例示されていると当方は認識しています。この20年来、当方が拝見した数千人のキャリアにおいて、上手くいっている人、及びそうでない人の双方とも、その因果関係は、このプランド・ハプンスタンス・セオリーですべて説明できると実感しています。

 よって、「目標やあるべき姿を設定して『そこに足りないあなたのスキルや経験は〇〇だから、あなたは■■のような会社に転職すべきです』といった、巷でよく聞くコンサルティング(?)」は実にナンセンスと言えるでしょう。

クランボルツが唱えた「課題へのアプローチスキル(意思決定スキル)」を日本マンパワーのキャリアカウンセラー養成講座では、以下のように整理しています。(TEXT3 50ページより引用)

ステップ1:解決すべき課題(選ぶべき選択肢)は何かを具体的な言葉で明確にする。

ステップ2:問題解決(もしくは選択)に向けての行動計画を立てる。踏むべきステップ、それの期限など。

ステップ3:価値観を明確にする。つまり、選択をして得るべき重要なものは何かを見極める。

ステップ4:興味や能力、ステップ3で見極めた価値観をベースに選択肢をつくる。

ステップ5:起こり得る結果を予測する。ステップ4で考えた選択肢すべてについて、それぞれ結果がどうなるかを考えてみる。

ステップ6:さらに情報を収集しながら、システマチックに選択肢を絞っていく。

ステップ7:選択肢の中でこれと決まったものについて行動を開始する。

 無論、これはステップ1からステップ7の一方通行ではなく、各ステップ間を何度も行き来をして然るべきですし、これを一人で考えるのが難しければ、上司や家族、あるいはキャリアカウンセラーやキャリアコンサルタントなどの支援を頂いても然るべきです。

 このステップを踏まえると課題や問題が出現してから行動を起こすまでに、若干の時間を要する気もしますが、これはあくまでも「キャリア構築における」課題へのアプローチスキルですので、例えば自社製品のクレームで人の命に関わるような場合などは全くの対象外です。

 また、初めて相談に来た登録者(求職者、キャンディデート)に対して、扱い求人への応募を急かす某業界の(にわか)コンサルタントの視点では、理解できないくらいもどかしいものなのでしょうが、実証された研究成果に基づき、かつ現在まで引き継がれているモデルですので、普遍的な価値を有することだけは確かです。

人は何歳になっても学習する必要があるのは申すまでもありません。(しかしながらそうでない人も散見されるのも事実ですが)。

クランボルツは学習のタイプを「道具的学習経験」と「連合的学習経験」(もう少し分かりやすい日本語訳が欲しいところですが・・・)の2つに分けています。各々の詳細は検索、もしくは専門書を紐解いてみてください。

 当方が注目しているのは後者の「連合的学習経験」です。日本マンパワーのキャリアカウンセラー養成講座では「感情的に中立だった出来事が特定の感情と結びついたときに起こる」と記されています。

 であれば、会社員にせよ事業家にせよ社長にせよフリーランスにせよ、働く人のキャリアは、この連合的「学習経験」の連続に他なりません。

 無論、キャリアカウンセラーやキャリアコンサルタントは、相談者(あるいは求職者、人材紹介でいうキャンディデート)の「先天的資質」と「環境条件や出来事」を変えることはできませんが、この学習経験(当然ながらプラスに働く形での)を支援することはできます。

社員の定着に課題のある企業を眺めると、管理職(もしくは上長)や人事部門にこの理解があれば、形だけでない人材開発や組織開発が進むと思う次第です。

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