その昔、当方がキャリアカウンセラーの養成講座を受講していた時代に触れた理論で、最も腑に落ちたのが、エドガー・H・シャイン(Edgar Henry Schein 1928- 2023以下、シャイン)の「キャリア・アンカー」(個人のキャリアの軸になるもの、考え方、価値観)でした。特に、20代、30代を相手にお話を伺っていた時期には、
・自分は何が得意か?
・自分は本当のところ何をやりたいのか?
・何をやっている自分に意味や価値を感じられるのか?
(日本マンパワー キャリアコンサルタント養成講座テキストより)
という「3つの問い」は非常に有効でした。が、相談者の年齢が上がるに従い、この視点だけでは不十分であることも痛感してきた次第です。
シャインも「キャリア開発の視点の本質は、時の経過に伴う個人と組織の相互作用に焦点があることにある」(邦訳『キャリア・ダイナミクス』p.2)としているように、組織の側からキャリアを考える視点があってこそ成立するとしています。おそらくシャインの理論の本質はここにあると思います。
結局、組織の一員として働く人がほとんどである社会においては、いくら心理学的視点で働く本人の内面のみにフォーカスしても片手落ちに終わるということではないかと思います。