10.ジョン.D.クランボルツの理論(プランド・ハプンスタンス・セオリー)
1999年にクランボルツが何人かの研究者と共同で発表した、キャリアにおける「偶然」の影響について説明したプランド・ハプンスタンス・セオリー(Planned Happenstance Theory)は、おそらく同氏の研究成果で最も有名なものです。
直訳すると「計画された偶然理論」になりますが、当方は「キャリアの大部分は『偶然』によって形作られ、かつそれを『好意的』に受け止めるほうが、『結果的』に良いキャリアになる」という理解です。
ものの研究では、キャリアの8割は「偶然」の要素によって左右されるそうです。(「偶然」を「予期せぬ出来事」に置き換えていただいたほうがわかりやすいかもしれません。)
確かに、一般的にキャリアで成功したとされる著名経営者の自叙伝や日本経済新聞の「私の履歴書」を紐解くと、これらの方々のキャリアが「予期していた」通り、あるいは「計画された」通りに作られたということは皆無です。予期せぬ出来事(ほとんどがトラブルや問題ごとといったネガティブ要素満載の場面です。)に対応し、考え、周囲の協力を得ながら向き合った結果、今の立場やキャリアがあるのは疑いのない所です。
詳細は割愛しますが、この「偶然」を(良い)キャリア形成の転機とするために①好奇心②持続性③柔軟性④楽観性⑤冒険心の5つのスキルが必要と同氏は述べておられます。
この5つのスキルというものも実に上手く例示されていると当方は認識しています。この20年来、当方が拝見した数千人のキャリアにおいて、上手くいっている人、及びそうでない人の双方とも、その因果関係は、このプランド・ハプンスタンス・セオリーですべて説明できると実感しています。
よって、「目標やあるべき姿を設定して『そこに足りないあなたのスキルや経験は〇〇だから、あなたは■■のような会社に転職すべきです』といった、巷でよく聞くコンサルティング(?)」は実にナンセンスと言えるでしょう。